「二段階世襲」を目指す金正日の焦り

執筆者:平井久志 2009年5月号
タグ: 北朝鮮 韓国
エリア: アジア

 北朝鮮は四月五日、「人工衛星」と称して長距離弾道ミサイルを発射。九日に最高人民会議第十二期第一回会議を開催し、金正日総書記を国防委員長に三選、金正日体制の第三期をスタートさせた。 金総書記の動画が公開されたが、左手などの動きが不自然で、昨年夏に脳卒中などに襲われたのが事実であることを示唆した。歩行や書類をめくる動作などはこなしてみせたものの、衰えは隠せない。これまでのように一から十まで自分で決裁することは肉体的、精神的にも困難だ。そこで軍や党の業務を国防委員会各メンバーにある程度委任する、いわば「分担委任統治」の形で体制を維持していくのではないかとみられる。

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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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