共和党をさらに保守化させるティーパーティーの勢い

執筆者:足立正彦 2010年9月6日
タグ: アメリカ
エリア: 北米

   大接戦となっていたアラスカ州共和党予備選挙が先週漸く決着した。同州選出の共和党上院議員リサ・マコウスキーが新人のジョ―・ミラーに対し敗北を認めたのだ。
   現職が予備選挙段階で敗北するという『番狂わせ』の背景には、08年共和党副大統領候補で前アラスカ州知事のサラ・ペイリンやティーパーティー(茶会党)運動支持者のミラーへの熱心な後押しがあった。
   アラスカ州は伝統的に共和党が圧倒的に優位な州だ。ミラーが11月の本選挙で民主党の対抗馬を破って当選する可能性が極めて高い。ミラーの他に茶会党運動に支えられて共和党予備選挙で正式指名を獲得した上院議員候補には、ランド・ポール(ケンタッキー)、シャロン・アングル(ネバダ)、ケン・バック(コロラド)、マイク・リー(ユタ)等が挙げられる。
   一方、昨年には共和党穏健派のアーレン・スペクター(ペンシルベニア)は同党を離党し、ジョージ・ヴォイノヴィッチ(オハイオ)、キット・ボンド(ミズーリー)らも今年の中間選挙で再選を目指さずに引退表明しており、今回マコウスキーも予備選挙で敗退したことで上院における共和党穏健派勢力は益々少数派になりつつある。
   茶会党運動に支えられた候補の多くが当選した場合、共和党内で保守派がさらに幅を利かすことは確実だ。今年7月には共和党下院議員24名が茶会党議員連盟を結成している。そうなると、来年1月開会の第112議会では、重要法案になればなる程、民主、共和両党のイデオロギー対立は鮮明になり、オバマが訴える『超党派主義』はさらなる後退を迫られることになるだろう。
   オリンピア・スノー上院議員(メイン)ら共和党穏健派は共和党が幅広い勢力の存在を党内に容認する『大きなテント(“Big Tent”)』となるべきと訴えている。だが、オバマ政権の積極的財政支出、自動車業界・金融業界への政府支援等に反発するかたちで昨年春から活発化した茶会党運動は共和党をさらに右へと押しやっているのが現実だ。こうした米国のイデオロギー面の『純化』の動きを、きちんと注視する必要がある。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
足立正彦(あだちまさひこ) 住友商事グローバルリサーチ株式会社シニアアナリスト。1965年生まれ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より、住友商事グローバルリサーチにて、シニアアナリストとして米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当し、17年10月から米州住友商事ワシントン事務所に勤務、20年4月に帰国して現職。
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