饗宴外交の舞台裏 (25)

在京大使が一番いいワインを出す国

執筆者:西川恵 2000年1月号
カテゴリ: カルチャー
エリア: 中東

 少し前、ある駐日大使と食事をしていて、各国大使公邸の饗宴に話が及んだ。「どこが一番いいワインを出すと思いますか」と聞かれたので、「当然フランスでしょう」と言うと、「イエメンです。外交団でも評判ですよ」と意外な答えが返ってきた。最近そのイエメンのアブドラハマーン・モハメッド・アル・ホーシー大使公邸の晩餐会に招かれた。

 公邸の玄関に迎えてくれたホーシー大使は、挨拶を終えると「赤ワイン、それとも白ワインがいいですか」と聞いてきた。ふつうは給仕が食前酒を運んでくるところである。大使は私をサロンに先導し、「これはいかがでしょう」と、テーブルの上の抜栓したばかりのダブルマグナム(三リットル)のボトルから赤ワインを注いでくれた。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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