饗宴外交の舞台裏 (30)

ムベキ南ア大統領を最大級に歓待したアメリカ

執筆者:西川恵 2000年6月号
エリア: アフリカ 北米

 昨年、マンデラ前大統領を継いだ南アフリカのムベキ大統領夫妻が五月二十二日、国賓として米国を初訪問し、同夜、クリントン大統領夫妻が主催する歓迎晩餐会がホワイトハウスでもたれた。

 この訪問で米大統領がどのようにムベキ大統領をもてなすかは、エイズ撲滅運動を推進する米国のNGO(非政府組織)や医療関係者にとって大きな関心の的だった。というのは今年になって両国間でエイズ治療をめぐり論争が展開されてきたからだ。

 南アは、エイズを発症させるといわれるHIVウィルス保持者が国民の約一〇%を占め、特に妊婦は二〇%を超える。HIVウィルスに有効な治療薬AZTは高価なためほとんど使われず、米、南アの医療関係者は「AZTを無料配布すべきだ」と主張してきた。

カテゴリ: 政治 カルチャー
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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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