饗宴外交の舞台裏 (33)

エリゼ宮料理長が語る仏大統領夫人たちの素顔

執筆者:西川恵 2000年9月号

 世界の元首の料理人の中で、エリゼ宮(フランス大統領官邸)の料理長ジョエル・ノルマン氏は、仕えた歳月の長さでは五指に入るだろう。エリゼ宮に入って三十五年になる今年、「かまどから見た第五共和制」(原題)という本を上梓した。かまどとは、勿論、エリゼ宮の厨房のことである。 第五共和制は一九五八年からスタートしたフランスの新しい政治体制で、初代大統領はドゴール。ノルマン氏は六五年、二十一歳のとき、ある人の紹介でエリゼ宮の厨房に見習いで入り、腕を見込まれて料理次長に抜擢され、八四年、引退した先代の後を襲って料理長に就いた。ドゴール(故人)、ポンピドー(同)、ジスカールデスタン、ミッテラン(同)、そして現在のシラク。第五共和制下の五人の大統領全員に仕えている唯一の料理人である。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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