「地図を見てください。我々のシンハラ仏教社会が、どれほど小さく弱々しいかお分かりいただけるでしょう」。スリランカのシンハラ人比丘(仏教僧)はカリフォルニア大学教授のユルゲンスマイヤーに対し、多数派でありながらいつも自らの存在に脅威を感じているシンハラ仏教徒の恐怖心についてこう語ったという(ユルゲンスマイヤー著『ナショナリズムの世俗性と宗教性』)。 スリランカではヒンズー教徒主体のタミル人過激組織「タミル・イーラム解放の虎(LTTE)」が分離独立を求め、政府との武力対立を二十年近く続けており、犠牲者はすでに六万人を超えている。「イーラム」はタミル語でスリランカを意味し、虎は十一世紀にスリランカ北部を支配した南インドの王朝の紋章である。

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