「大久保(利通)だってあの西郷(隆盛)と戦ったんだ。穏便に、では戦にならん!」 番号を公開していない総理大臣執務室の電話。小泉純一郎の声が響き渡る。あまり波風を立てないで丸く収めたらどうだ、というアドバイスに小泉が反論しているのだ。 派閥の力を結集して小泉を政権の座から引きずり降ろしたいともくろむ亀井静香、野中広務ら反小泉グループ。それに対して小泉は派閥に頼らず、たった一人で抵抗勢力をねじ伏せようとしている。少なくとも表面的には、そう見える。 しかしながら、眼光紙背に徹して政局を見ると、あちこちに小泉が仕掛けた罠が見えてくる。小泉印のクサビが、方々に埋め込まれているのだ。このクサビの存在を発見せずに、総裁選後の政局を読むことはできない。総裁選での勝ち負けばかりでなく、人事の骨格まで見えてくるのだ。
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