“世俗国家”フランスを揺るがすイスラム教徒のスカーフ

執筆者:国末憲人 2003年12月号
エリア: ヨーロッパ

[パリ発]仏国民議会(下院)はその時々の政策課題についてインターネットの討論コーナーを設けている。そこで十月以降、最も議論が闘わされている話題は、イラク問題でも欧州統合でもなく「学校での宗教的象徴」。中学、高校でイスラム教女生徒が着用しようとするスカーフやベールを認めるかどうかが焦点だ。「髪の毛を隠すのはイスラム教徒の権利。フランスが自由の国なら着用を認めるべきだ」「キリスト教徒も学校では十字架を身につけない。イスラム教徒だけなぜ我慢できないのか」 新聞の寄稿欄も連日この論争で埋まっているが、騒ぎ自体は、決して目新しい話ではない。パリ北方クレイユの公立中学で、教師の指導に従わず、スカーフを着用した女生徒が教室から排除されたのが八九年。以後もトラブルは断続的に起きていた。

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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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