饗宴外交の舞台裏 (77)

その違いに乾杯 英仏協商100周年

執筆者:西川恵 2004年6月号
エリア: ヨーロッパ

 英仏協商百周年を記念して、英国のエリザベス女王が四月五日から七日まで国賓としてフランスを訪れ、大歓迎を受けた。英王室とフランスの「特別な関係」は、両国の確執を緩和する上で大きな心理的効果をもたらした。 女王が国賓としてフランスを訪れるのは一九五七、七二、九二年についで四回目で、諸外国の中で最多回数である。「第一回の訪問の時から、女王はパリにこのうえない愛着を感じておられます」とバッキンガム宮殿は事前ブリーフィングで述べた。 英仏協商は、フランス語でen-tente cordiale(真心からの合意の意)。両国は一八九八年のスーダンのファショダでの武力衝突を機に、一九〇四年に一年越しの交渉で協商を締結し、植民地勢力圏を取り決めた。結果的には英仏協商は百年戦争(十四世紀)以来の両国の覇権競争に終止符を打ち、英国の欧州大陸からの孤立主義を終わらせるものとなったのである。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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