カダフィ死亡後の米朝ロードマップは可能か

執筆者:平井久志 2011年11月9日
エリア: アジア

 リビアのカダフィ大佐が10月20日、反カダフィ派によって連行される過程で銃撃され、血まみれで殺されるという悲惨な最期を遂げた。北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記はこの映像をどのような気持ちで見つめていたのだろうか。
 おそらく、金正日総書記はカダフィ大佐に自分の将来の姿を見るのではなく「カダフィ、欧米を信じるからこうなるのだ。俺はお前のようにはならない」と考えただろう。リビアのカダフィ派が敗北したのは、北大西洋条約機構(NATO)軍の空爆を受けても、NATOを攻撃できる手段を持たなかったからだ、と。
 その意味で、リビア情勢の結末は、長い目では世界の独裁体制の強力な一角が崩れた意味を持つにしても、北朝鮮が自ら核、ミサイル、生物化学兵器という大量殺傷兵器を放棄する可能性をさらに低めたともいえる。北朝鮮が国内の統制をさらに強化するのは間違いなく、中東の民主化の波は、当面は、東アジアでは圧政強化の口実となるかもしれない。

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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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