前代未聞の機密漏洩に揺れるバチカン

執筆者:秦野るり子 2012年3月26日
エリア: ヨーロッパ
昨年末、バチカンのサンピエトロ大聖堂で恒例のミサを行なったベネディクト16世 (C)EPA=時事
昨年末、バチカンのサンピエトロ大聖堂で恒例のミサを行なったベネディクト16世 (C)EPA=時事

 ドイツ出身のベネディクト16世(本名ヨーゼフ・アロイス・ラッツィンガー)が、世界に11億人の信者を持つカトリック教会の頂点であるローマ法王に選ばれてから4月で7年になる。  前任のヨハネ・パウロ2世に比べて国際社会での影は薄いうえ、一般信者の人気も低迷している。しかも、最近では、法王宛ての親書などバチカンの機密文書が漏れ出し、イタリア・メディアで連日のように取り上げられるという前代未聞の事件が発生した。奥の院からの情報漏洩は、カトリック総本山バチカン(ローマ法王庁)への信頼を著しく損なうとともに、バチカン官僚のトップであるタルチジオ・ベルトネ国務長官を軸とした内部抗争が起きていることを示している。

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執筆者プロフィール
秦野るり子(はたのるりこ) 1957年東京生まれ。江戸川大学教授。1982年、読売新聞社入社。経済部に配属され、農水省、流通業界、通産省(現経産省)、日銀などを担当。89年に国際部へ異動。ワシントン、ジャカルタ、ローマ特派員、国際部デスクなどを経て2008年から調査研究本部主任研究員。コロンビア大学ジャーナリズム大学院客員研究員、カリフォルニア大学バークレー校ジャーナリズム大学院客員講師も務め、2016年から富山国際大学教授、2019年から現職。著書に『ローマ法王2年目の挑戦』(読売新聞社)、『バチカン』(中公新書ラクレ)、『悩めるローマ法王 フランシスコの改革』 (中公新書ラクレ)などがある。
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