ムバラク退陣とオバマ政権の立場

執筆者:渡部恒雄 2011年2月14日
エリア: 北米 中東

 2月11日、オバマ大統領はエジプトのムバラク大統領の辞任を受け、ホワイトハウスで「ムバラク氏は辞任によってエジプト国民の変革への渇望に応えた」との声明を発表した。ただし、オバマ大統領は「これは移行の終わりではなく始まりだ。困難な日々が待ち受けている」と指摘して、エジプト軍部に対して「国民が信用できる移行を進めねばならない」と呼び掛け、非常事態法の解除、自由で公正な大統領選挙と憲法改正などの具体的な措置を求めた。

 権力を掌握しているのは軍だが、軍の最高評議会が声明を出し、シャフィック首相率いる現在の内閣が存続すること、そして「すべての国際的な義務や条約を守る」としてイスラエルとの平和条約を尊重する立場を確認したことは、オバマ政権にとっては何よりの朗報といえるだろう。

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執筆者プロフィール
渡部恒雄(わたなべつねお) わたなべ・つねお 笹川平和財団上席フェロー。1963年生まれ。東北大学歯学部卒業後、歯科医師を経て米ニュースクール大学で政治学修士課程修了。1996年より米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員、2003年3月より同上級研究員として、日本の政治と政策、日米関係、アジアの安全保障の研究に携わる。2005年に帰国し、三井物産戦略研究所を経て2009年4月より東京財団政策研究ディレクター兼上席研究員。2016年10月に笹川平和財団に転じ、2017年10月より現職。著書に『大国の暴走』(共著)、『「今のアメリカ」がわかる本』、『2021年以後の世界秩序 ー国際情勢を読む20のアングルー』など。最新刊に『防衛外交とは何か: 平時における軍事力の役割』(共著)がある。
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