テロ事件の顛末と仏大統領選への影響

執筆者:渡邊啓貴 2012年4月3日
エリア: ヨーロッパ

 南仏を震撼させ、7人の犠牲者を出した銃撃テロの犯人モハマド・メラの大捕物は、30時間に及ぶ治安当局の犯人自宅包囲・突入作戦の結果、犯人が被弾しバルコニーから転落即死して終結した。

 この事件の第1幕は、3月11日に発生した。南仏トゥールーズ市の第1パラシュート連隊所属の30歳になるマグレブ系の伍長が運動ジムの駐車場でスクーターに乗った男に銃撃殺害された。そしてその4日後には、トゥールーズ市から近郊のモントバン市で第17パラシュート連隊の3人の兵士が襲われ、2人が殺害された。いずれも海外出身の兵士であったことから、フランス軍への怨恨や反感を持った者による外国人兵士を狙った犯行ではないかと疑念がもたれた。

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執筆者プロフィール
渡邊啓貴(わたなべひろたか) 帝京大学法学部教授。東京外国語大学名誉教授。1954年生れ。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程・パリ第一大学大学院博士課程修了、パリ高等研究大学院・リヨン高等師範大学校・ボルドー政治学院客員教授、シグール研究センター(ジョージ・ワシントン大学)客員教授、外交専門誌『外交』・仏語誌『Cahiers du Japon』編集委員長、在仏日本大使館広報文化担当公使(2008-10)を経て現在に至る。著書に『ミッテラン時代のフランス』(芦書房)、『フランス現代史』(中公新書)、『ポスト帝国』(駿河台出版社)、『米欧同盟の協調と対立』『ヨーロッパ国際関係史』(ともに有斐閣)『シャルル・ドゴ-ル』(慶應義塾大学出版会)『フランス文化外交戦略に学ぶ』(大修館書店)『現代フランス 「栄光の時代」の終焉 欧州への活路』(岩波書店)など。最新刊に『アメリカとヨーロッパ-揺れる同盟の80年』(中公新書)がある。
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