「転がりたがり」の伝統

執筆者:星野 智幸 2014年3月26日
エリア: 中南米

  世界中どこへ行ってもアルゼンチンの選手だけは見分けがつく。

 その1、長髪が多い。それも、無造作にワイルドに伸ばしっぱなし、という印象の黒い長髪。何が起源なのかはわからないが、アルゼンチンが1978年のW杯で初優勝を遂げたときには、スターのマリオ・ケンペスが長髪だったから、その伝統かもしれない。もっとも、あの時代はまだ長髪フォークソングの文化が残っており、どの国にも長髪のサッカー選手はいて、ケンペスはたんにその1人だったのだろう。だとすれば、アルゼンチンのサッカー選手は、1970年代カウンターカルチャーの長髪文化を、今でも保存している希有な人たちということになる。

カテゴリ: スポーツ
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執筆者プロフィール
星野 智幸(ほしのともゆき) 作家。1965年ロサンゼルス生れ。早稲田大学第一文学部を卒業後、新聞記者をへて、メキシコに留学。1997年『最後の吐息』(文藝賞)でデビュー。2000年『目覚めよと人魚は歌う』で三島由紀夫賞、2003年『ファンタジスタ』で野間文芸新人賞、2011年『俺俺』で大江健三郎賞を受賞。著書に『ロンリー・ハーツ・キラー』『アルカロイド・ラヴァーズ』『水族』『無間道』などがある。
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