クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

バージニアの銃弾に隣人の激しさを思う

執筆者:徳岡孝夫 2007年6月号
エリア: 北米

 キャンパスの正面ゲートを出ると、緩い下り坂になっている。五十年近い昔の古い記憶。私は大学から下宿へ、のんびりその道を歩いていた。ニューヨーク州北部の大学町である。 道の真ん中に一台のパトカーが斜めに停まり、警官が二人、車を楯に、私がいま来た方角にピストルの銃口を向けていた。 留学先にまで日本人ならではの平和ボケを持ち込んでいた私は、カッコよく銃を構える二警官を見て「映画のロケかあ」と思った。そのまま歩調を変えず、下宿へ帰った。 ロケでないと知ったのは、翌朝の新聞を見たときである。事件の詳細はすっかり忘れたが、我が住む宿の近くに強盗が入ったと出ていた。ロケにしてはカメラもなく、なるほど監督の姿も見なかった。

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