中東―危機の震源を読む (38)

「祖父の地点」に戻ったエジプトの改革の帰結

執筆者:池内恵 2008年2月号
エリア: 中東

[アレクサンドリア発]昨年末から三カ月の在外研究で、エジプトに来ている。アレクサンドリア大学に客員教授として籍を置きつつ、日々の動きから距離をおいて、中東の近代史を振り返り、その中で現在の動きを見直してみようとしている。毎日のニュースはもちろん現地にいることでより細かく入ってくるが、それらは短期的な結果よりも、地域全体の長期的な変化にやがては結実する複雑な筋書きの、細やかな伏線としてみていくことが適切だろう。 ブッシュ米大統領は一月九日から十六日にかけて大規模な中東歴訪を行なった。パレスチナ問題の解決に向けてアメリカとしては最大限の努力をしたと印象づけること。対イランの包囲網をペルシア湾岸のアラブ諸国そしてエジプトとの間に醸成すること。どちらも短期的に成果は得られないものの、行なうべきことを淡々と行なっている。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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