テロリストの誕生(16)12人目の犠牲者

執筆者:国末憲人 2015年8月15日
エリア: ヨーロッパ 中東

 目的を果たして『シャルリー・エブド』編集部を出たクアシ兄弟は、建物の前の横断歩道上に停めていた車にたどり着いた。車は、黒いシトロエンC3である。乗り込む前に、弟シェリフと思われる男は左手を高く掲げ、周囲に誇示するように「預言者ムハンマドの敵を討ったぞ」と3回叫んだ。2人は、カラシニコフ銃の弾を詰め替えた後、車を発進させた。

『シャルリー』編集部のビルはニコラ・アペール街の行き当たりに位置しており、その先は右行き一方通行のヴェルト通路に入るしかない。通路を抜けると大通りに出て、どこにでも逃げられるはずである。兄弟のシトロエンもヴェルト通路に入り、一方通行に沿って北上した。

カテゴリ: 政治 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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