東芝「粉飾決算」の責任を問わない「役員責任調査委」驚愕の報告内容

執筆者:磯山友幸 2015年11月12日
タグ: 日本
エリア: アジア

 東芝は11月9日、粉飾決算に関わった経営者の責任を調査していた「役員責任調査委員会」の調査報告書を公表した。同社は11月7日に歴代社長ら5人に合計3億円の損害賠償請求訴訟を提起したことを発表していたが、その前提になったものだ。東芝や役員と利害関係がない裁判官・検事OB3人を委員としたが、内容を読む限り、東芝側の主張に配慮したもので、「大甘」の印象はぬぐえない。総額2248億円、確定していた決算だと2781億円に及ぶ前代未聞の巨額粉飾の責任は、矮小化されている。

 

「被害者」の視点が欠落

「『東芝、市場健全性害す』 調査委報告 元社長ら義務違反」――。調査報告の内容を報じた11月10日付の日本経済新聞の1面記事は、あたかも調査委員会が経営者を厳しく断罪しているかのような見出しを立てていた。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
磯山友幸(いそやまともゆき) 1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト活動とともに、千葉商科大学教授も務める。著書に『2022年、「働き方」はこうなる』 (PHPビジネス新書)、『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、『破天荒弁護士クボリ伝』(日経BP社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)、『「理」と「情」の狭間――大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP社)などがある。
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