北朝鮮「2つの事件」(下)増すばかりの「核の脅威」

執筆者:平井久志 2015年12月23日
エリア: アジア

「首領唯一恐怖体制」

 韓国の情報機関、国家情報院(国情院)傘下の研究機関「国家安保戦略研究院」は11月26日、ソウル市内で「金正恩政権4年の評価と南北関係の展望」と題したシンポジウムを開き、李スソク同研究院首席研究委員は「金正恩政権が発足して以降に処刑された幹部が100余名に達すると把握される」と報告し、金正恩体制が「首領唯一恐怖体制」ともいうべき金正恩第1書記による個人独裁が強まっているとした。
 北朝鮮では11月3、4両日、平壌市内で「第7回軍事教育指揮者大会」が開催された。この大会の様子が記録映画として12月3日から朝鮮中央テレビで放映され始めた。大会の冒頭で、金正恩第1書記が中央に座り、向かって右側にいた朴永植(パク・ヨンシク)人民武力部長に手で「座れ」と合図するが、朴部長は座らず、自分より序列が上の黄炳瑞(ファン・ビョンソ)軍総政治局長の方を見る。金正恩第1書記が今度は黄炳瑞総政治局長に手で「座れ」というと、黄炳瑞軍総政治局は敬礼をした後にようやく座った。朴永植人民武力部長はこれを見て、ようやく席に着くという光景が報じられた。
 テレビを見た北朝鮮住民たちは、金正恩第1書記の前で着席にすら気を遣わざるを得ない現在の権力層の「雰囲気」を感じ取るだろう。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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