「Brexit (英国のEU離脱)は、まずあり得ないよ」。プライベートバンカーをしていて、英国ともつながりが深いスイス人の友人は、ほんの2週間前にこう言い切っていた。情勢の読みと分析が鋭い彼は、リーマンショックや、ユーロ危機でも顧客に損を出させなかった評判を持つ。そんな彼でも読み切れなかった今回の英国人の国民投票の結果は、大陸にいるヨーロッパ人の大半にとっては、「まさか」というのが正直なところだと思う。
しかし今から思い出してみれば、昨年英国バーミンガム市を訪れたときに、今回の結果につながるような時代の変化の兆しは、空気の中に存在していた。EU離脱へと向かわせた英国民の不満は、見えないかたちで少しずつ沈殿していて、6月23日にマグマのように吹き出てきたということなのだろう。

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