【前回までのあらすじ】
珍しく休暇を取り、団欒のひと時を過ごしていた磯部勇人1尉。自衛隊を辞め、新たな人生を送ることを考え始めたところに、緊急の呼び出し連絡が入り、短い休日が終わった。行先は、所属する陸上自衛隊第12旅団司令部ではなく、在日アメリカ陸軍座間キャンプ。ゲートをくぐり、地下壕の入り口のような鉄扉の前に立った。
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カチャ、とロックのはずれる音がして、磯部は重たい扉をひらき、気密性の高そうな室内特有のひんやりした空気につつまれた施設に足を踏み入れた。狭い通路はまばゆいほどの照明に照らされているが、夜間には護衛艦の艦内さながら、ぼうっとした赤色灯がともることになっている。いきなり外に飛び出す事態になっても、暗夜の塗りこめたような暗さにすぐに眼が慣れて、一瞬の遅滞もなく行動がとれるようにするための、いかにもこのチームならではの仕掛けである。
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