Δ(デルタ)

連載小説 Δ(デルタ)(7)

執筆者:杉山隆男 2017年5月28日
エリア: 北米 アジア
沖縄県・尖閣諸島の魚釣島と北小島、南小島 (c)時事

 

【前回までのあらすじ】

珍しく休暇を取り、団欒のひと時を過ごしていた磯部勇人1尉。自衛隊を辞め、新たな人生を送ることを考え始めたところに、緊急の呼び出し連絡が入り、短い休日が終わった。行先は、所属する陸上自衛隊第12旅団司令部ではなく、在日アメリカ陸軍座間キャンプ。ゲートをくぐり、地下壕の入り口のような鉄扉の前に立った。

 

     9

 カチャ、とロックのはずれる音がして、磯部は重たい扉をひらき、気密性の高そうな室内特有のひんやりした空気につつまれた施設に足を踏み入れた。狭い通路はまばゆいほどの照明に照らされているが、夜間には護衛艦の艦内さながら、ぼうっとした赤色灯がともることになっている。いきなり外に飛び出す事態になっても、暗夜の塗りこめたような暗さにすぐに眼が慣れて、一瞬の遅滞もなく行動がとれるようにするための、いかにもこのチームならではの仕掛けである。

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執筆者プロフィール
杉山隆男 1952年、東京生れ。一橋大学社会学部卒業後、読売新聞記者を経て執筆活動に入る。1986年に新聞社の舞台裏を克明に描いた『メディアの興亡』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。1996年『兵士に聞け』で新潮学芸賞受賞、以後『兵士を見よ』『兵士を追え』とつづく「兵士シリーズ」は7作目の『兵士に聞け 最終章』で完結した。ノンフイクション、小説、エッセイなど精力的に執筆し、『汐留川』『昭和の特別な一日』『私と、妻と、妻の犬』など著書多数。
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