【前回までのあらすじ】
在日アメリカ陸軍座間キャンプの秘密の場所。磯部勇人1尉が重い扉を開いて中に入ると、待っていたのは秘密部隊デルタの事実上のトップ・山科1佐と、中央即応集団司令官の佐竹陸将。そして磯部が聞かされたのは、「センカク」での「29人対30人の殺し合い」という命令だった。
9(承前)
佐竹も山科も、磯部の反応をたしかめるように正面と真横からじっとみつめている。だが、磯部の表情に何の変化もあらわれなかった。佐竹の視線をはね返すような強い眼差しではなく、ただ受けとめている。平静さの裏に内心の動揺を隠していたというのではない。それどころか磯部は驚きもしなかった。
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