Δ(デルタ)

連載小説 Δ(デルタ)(8)

執筆者:杉山隆男 2017年6月4日
エリア: 北米 アジア
沖縄県・尖閣諸島の魚釣島と北小島、南小島 (c)時事

 

【前回までのあらすじ】

在日アメリカ陸軍座間キャンプの秘密の場所。磯部勇人1尉が重い扉を開いて中に入ると、待っていたのは秘密部隊デルタの事実上のトップ・山科1佐と、中央即応集団司令官の佐竹陸将。そして磯部が聞かされたのは、「センカク」での「29人対30人の殺し合い」という命令だった。

 

     9(承前)

 佐竹も山科も、磯部の反応をたしかめるように正面と真横からじっとみつめている。だが、磯部の表情に何の変化もあらわれなかった。佐竹の視線をはね返すような強い眼差しではなく、ただ受けとめている。平静さの裏に内心の動揺を隠していたというのではない。それどころか磯部は驚きもしなかった。

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執筆者プロフィール
杉山隆男 1952年、東京生れ。一橋大学社会学部卒業後、読売新聞記者を経て執筆活動に入る。1986年に新聞社の舞台裏を克明に描いた『メディアの興亡』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。1996年『兵士に聞け』で新潮学芸賞受賞、以後『兵士を見よ』『兵士を追え』とつづく「兵士シリーズ」は7作目の『兵士に聞け 最終章』で完結した。ノンフイクション、小説、エッセイなど精力的に執筆し、『汐留川』『昭和の特別な一日』『私と、妻と、妻の犬』など著書多数。
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