【前回までのあらすじ】
巡視船「うおつり」を制圧した「愛国義勇軍」。名簿上の乗組員は30人だが、確認できているのは27人。2人死亡しているので、1人の行方が分からない。船内の捜索に出かけた義勇軍の最年少兵士・張が、特警隊員の市川準一・2等保安士の隠れ場所にっ近づいてきた。
10(承前)
握り飯を口にくわえたままカラシニコフを構えた男は、銃のリアサイト越しに眼を細めて照準を定めながら少しずつ距離を縮めてくる。市川も、左手で道具箱の蓋を支えてわずかな隙間をつくりながら、右手はももに伸ばし、巻きつけてあるレッグポーチのホルスターからペティナイフを抜きとった。市川はナイフをいったん道具箱の底板におき、刃の部分を覆っているエッジガードを指先で押しながら、音を立てないように慎重にはずしていく。
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