マネーの魔術史 (20)

なぜ金が本位貨幣になったのか?

執筆者:野口悠紀雄 2017年10月12日
エリア: 北米 ヨーロッパ
(C)AFP=時事

 

 18世紀の後半に金がイギリスにおいて本位貨幣として採用されたのはなぜか? なぜ銀でなく、金なのか?

 教科書にある説明だと、金は、非常に柔らかいので加工がしやすく、分割することもできるからだ、とされている。そのとおりだ。転生の大きさは驚嘆するほど。1グラムの金は、1メートル四方にまで伸ばすことができる。その厚さは実に10000分の1ミリだ。

 また、銀の輝きは急速に失われるが、金は腐食しにくい。それに、何といっても、金が持つ色やその輝きは、人間にとって根源的な魅力を持っている。このような神秘的な要素が金本位制の背後にあることは、否定できない。

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執筆者プロフィール
野口悠紀雄(のぐちゆきお) 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)、『マネーの魔術史』(新潮選書)、『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
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