連載小説 Δ(デルタ)(35)

執筆者:杉山隆男 2017年12月16日
エリア: アジア
沖縄県・尖閣諸島の魚釣島と北小島、南小島 (C)時事

 

【前回までのあらすじ】

秘密部隊デルタのオペレーションルームと化した、総理執務室。トップの緒方首相をはじめ、井手官房長官、門馬危機管理監、滝沢情報官が、中国の意図についてさまざまに意見を交わし、考えを巡らせていた。それは現代だけでなく、時に歴史をさかのぼるものでもあった。一方、乗っ取られた巡視船「うおつり」の船内では――。

 

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 その遺体から爆弾を仕掛ける場所を示したメモのようなものは結局見つからなかった。船内に居残った愛国義勇軍のメンバーが謝(シェ)ともうひとりの他に誰かいるのか、依然としてわからない中で市川は動くに動けない状態がつづいていた。

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執筆者プロフィール
杉山隆男(すぎやまたかお) 1952年、東京生れ。一橋大学社会学部卒業後、読売新聞記者を経て執筆活動に入る。1986年に新聞社の舞台裏を克明に描いた『メディアの興亡』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。1996年『兵士に聞け』で新潮学芸賞受賞、以後『兵士を見よ』『兵士を追え』とつづく「兵士シリーズ」は7作目の『兵士に聞け 最終章』で完結した。ノンフイクション、小説、エッセイなど精力的に執筆し、『汐留川』『昭和の特別な一日』『私と、妻と、妻の犬』など著書多数。
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