Δ(デルタ)

連載小説 Δ(デルタ)(42)

執筆者:杉山隆男 2018年2月3日
エリア: アジア
沖縄県・尖閣諸島の魚釣島と北小島、南小島 (C)時事

 

【前回までのあらすじ】

巡視船「うおつり」での愛国義勇軍に対する破壊工作を発見され、拘束された市川。彼は馬中尉なる人物から、作業用ゴムボートのありかを教えるよう強要される。もし教えなければ、人質となっている乗組員が爆殺される――。

 

     32

「『うおつり』で動きがありました」

 ブザーが鳴って、テーブル中央に埋めこまれたスピーカーから、「幹部部屋」に詰めている官房副長官補の緊張した声が流れる。ほぼ同時に、総理執務室の壁面を覆った巨大スクリーンには、海自最新鋭哨戒機P1からデータリンクで送られてくるライブ映像が映し出された。暗視カメラがとらえた、つくりもののような異次元チックな映像ではない。

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執筆者プロフィール
杉山隆男 1952年、東京生れ。一橋大学社会学部卒業後、読売新聞記者を経て執筆活動に入る。1986年に新聞社の舞台裏を克明に描いた『メディアの興亡』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。1996年『兵士に聞け』で新潮学芸賞受賞、以後『兵士を見よ』『兵士を追え』とつづく「兵士シリーズ」は7作目の『兵士に聞け 最終章』で完結した。ノンフイクション、小説、エッセイなど精力的に執筆し、『汐留川』『昭和の特別な一日』『私と、妻と、妻の犬』など著書多数。
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