やわらかい頭で中東を知りたい人に

新刊『【中東大混迷を解く】シーア派とスンニ派』        著者・池内恵インタビュー

執筆者:池内恵 2018年5月29日
タグ: シリア 日本
エリア: 中東

 

――“中東ブックレット”待望の第2弾がようやく刊行です。当初は年2、3冊ペースでとのことでしたが、『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』から丸2年です。どうなさっていたのでしょう?

 大変お待たせしました。“中東ブックレット”シリーズを構想した時には、もっと気軽に頻繁に出すつもりだったのですが……。時間がかかった理由は、1つ挙げれば1冊目に力を入れすぎたことですね。『サイクス=ピコ』は、ブックレットと銘打っていても、結局、単行本を1冊書くのと同じ労力を割いて、けっこう大掛かりな本になっています。しかも最新の中東情勢を盛り込んだので、短時間に尋常ではない集中の仕方をして、本を出しました。編集も校正も印刷も、特別体制を組んでもらったので出ましたが、普通ならあの質と量をあの短期間では書けません。まあそのおかげで、『サイクス=ピコ』は、ベストセラー狙いの奇をてらったものではないにもかかわらず、かなり売れたんですよね。やっぱり潜在的な読者がいるんだな、と感じて心強く思うのと同時に、質を落とせないというプレッシャーもかかり、結局2年間、第2弾『シーア派とスンニ派』の準備に費やしました。ですが、このテーマは、シリーズを考案した時から、続刊リストの筆頭にありました。中東について、世の中の人が知りたいと思っているテーマに、専門的な見地から根拠のある答えを、コンパクトに与える、というシリーズの狙いにぴったりです。

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top