暴徒化抗議デモ「黄色いベスト運動」でマクロン政権「危機直面」

執筆者:渡邊啓貴 2018年12月3日
エリア: ヨーロッパ
シャンゼリゼ通りは「暴徒の街」と化した(C)AFP=時事

 

【パリ発】 12月2日朝、エマニュエル・マクロン大統領は、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が開催されていたアルゼンチンのブエノスアイレスから急遽帰国、そのまま凱旋門広場を訪問した。凱旋門広場はシャンゼリゼ通りを上りきった広場で、無名戦士の墓があり、国民的記念日には追悼の炎がともされる。

 その前日の土曜日(1日)、パリで「黄色いベスト運動」の抗議運動が暴徒化し、シャンゼリゼ付近を中心に警察・治安部隊と衝突したからである。店舗や銀行の玄関、ガラスが割られ、凱旋門にも落書きがされ、信号機や街灯が破壊され、たくさんの自動車が路上で放火され炎上した。略奪も起きたという。680人以上が拘束され、260人以上が負傷、そのうち20人以上が治安当局の負傷者だった。南仏ではデモに巻き込まれた死者が出ており、この抗議運動が始まってから3人目の犠牲者となった。治安部隊はこの日4000人動員された。たまたま出張でパリに滞在していた筆者も、この光景を眼前にして衝撃を受けた。

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執筆者プロフィール
渡邊啓貴(わたなべひろたか) 帝京大学法学部教授。東京外国語大学名誉教授。1954年生れ。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程・パリ第一大学大学院博士課程修了、パリ高等研究大学院・リヨン高等師範大学校・ボルドー政治学院客員教授、シグール研究センター(ジョージ・ワシントン大学)客員教授、外交専門誌『外交』・仏語誌『Cahiers du Japon』編集委員長、在仏日本大使館広報文化担当公使(2008-10)を経て現在に至る。著書に『ミッテラン時代のフランス』(芦書房)、『フランス現代史』(中公新書)、『ポスト帝国』(駿河台出版社)、『米欧同盟の協調と対立』『ヨーロッパ国際関係史』(ともに有斐閣)『シャルル・ドゴ-ル』(慶應義塾大学出版会)『フランス文化外交戦略に学ぶ』(大修館書店)『現代フランス 「栄光の時代」の終焉 欧州への活路』(岩波書店)など。最新刊に『アメリカとヨーロッパ-揺れる同盟の80年』(中公新書)がある。
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