「古代禅譲制」で習近平一強を礼賛する「中國京劇」ご都合主義

執筆者:樋泉克夫 2019年6月6日
エリア: アジア
1956年刊行の歴史副読本『怎樣學習歷史』(筆者提供)

 

 中華人民共和国文化部和旅游部が主管し、「全国中文核心期刊・A類学術期刊」と位置づけられる『中國京劇』(4月号/総第262期)が、新編歴史劇『大舜』を特集している。中華文明と伝統文化の礎を築いたと伝承される堯・舜・禹の3皇帝の1人、舜の生涯を柱に、3代の皇帝の間の禅譲という政権継承行為に顕現された自己犠牲と道徳性を称賛する内容だ。

 共産党政権が娯楽=宣伝=政治思想教育という毛沢東以来の伝統的文芸政策を放棄したと明言していないところから判断して、『大舜』もまた目下急務の政治教育の一環であり、習近平政権の文化行政当局にとってはイチオシの京劇と見做すことができるだろう。

カテゴリ: 政治 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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