民間防衛隊に追われる旧友の娘の訪問を受けた信也。その胸に過去の記憶が去来する。
[承前]
「まず上がって、奥で休んで」
「ありがとうございます」
ふたりは、勝手口の三和土に身体を入れた。背中に荷を背負っている。娘は運動着のような服を着ていた。もしかすると、仙台からの道のりの大半を歩き詰めだったのかもしれない。幹線道路をはずれ農道や山道を使って。
酒井真智が、娘だという子供の背を押して、靴を脱がせ、台所に上らせた。ついで自分自身も。信也は、裏庭で湯をわかしていることを思い出した。
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