我々はいかに権威主義に立ち向かうべきか

2020年は15年連続で民主主義が後退したという(フリーダムハウスHPより)
「民主主義vs.権威主義」という構図で世界を捉える時、そもそも権威主義とは如何なるものかを理解することが重要だ。 『権威主義:独裁政治の歴史と変貌』(白水社)の著者であるミシガン州立大学のエリカ・フランツ助教授が、権威主義の量的・質的分類と冷戦以降の進化の歴史から、民主主義陣営が取るべきアプローチを提唱する。

 

 長い歴史の中で、古代ローマ皇帝から帝政ロシアのツァーまで、権威主義支配は普通のことであった。20世紀には世界各地で民主主義が現れ始めたが、今でも世界の国の4割程度は独裁政権下にある(註1)。ここ10年ほどは,世界的な民主主義の後退にあわせて権威主義が台頭しつつある(註2)。

 権威主義の持続は,世界平和と繁栄に対しても重大な意味を持つ。独裁政権は第一次世界大戦以降のあらゆる国家間戦争に関与してきたし、第二次大戦以降の内戦・民族紛争のおよそ3分の2、政府による大量殺害のほとんどすべてに関与してきた(註3)。人権侵害や汚職は権威主義体制の統治下においてより悪化する。こういった理由があるからこそ、権威主義支配に内在するダイナミズムを理解することがきわめて重要なのである。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
エリカ・フランツ(Erica Frantz)(えりかふらんつ) ミシガン州立大学政治学部助教授。2008年、UCLAで政治学の博士号を取得。南米を事例として、民主化や権威主義体制の移行の研究で名高いB・ゲデス(Barbara Geddes)のもとで学び、独裁と権威主義の研究に的を絞り、近年多くの学術論文と学術書を精力的に執筆している。主著は『権威主義:独裁政治の歴史と変貌』(白水社 2021年)、N・エズロウ(Natasha Ezrow)との共著『The Politics of Dictatorship: Institutions and Outcomes in Authoritarian Regimes 』(Lynne Rienner Publishers, 2011), ゲデスとJ・ライト(Joseph Wright)との共著『How Dictatorships Work 』(Cambridge University Press, 2018) 。
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