インテリジェンス・ナウ

オバマ政権がテロより重大視する「経済危機の脅威」

執筆者:春名幹男 2009年4月号
エリア: 北米

 クリントン米国務長官が初の外遊先に選んだ東アジア歴訪。米人権団体が厳しく批判した。 長官は二月二十日、ソウルで行なった同行記者団との会見で、中国の人権問題を「取り上げ続ける」としながらも、「世界経済危機や温暖化、安保といった問題(での協力)が妨げられるようなことはしない」と明言した。 つまり、経済危機が最優先で人権問題は二の次、というのだ。 しかしこの発言、口が滑ったわけでも、失言でもなかった。オバマ新米政権の戦略的な大方針だったのである。 その八日前、デニス・ブレア国家情報長官(DNI)が発表した「脅威評価年次報告書」は「世界経済危機が、短期的には米国の安全保障上の第一の懸念」と強調していたのだ。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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