裂けた明日
裂けた明日 (23)

連載小説:裂けた明日 第23回

執筆者:佐々木譲 2021年10月2日
タグ: 日本
エリア: その他
写真提供:EPA=時事
内戦により、分断された日本。相次ぐ震災と原発事故、そして例の病気の蔓延で、国民の生活は壊滅的な影響を受けていた。家族を亡くし一人暮らす男の元へ、逃亡者が現れる――。<作家の眼が、現実を鋭く照射する。近未来の分断日本を描く、スリリングなSF長篇>

封鎖線突破に失敗してしまった信也と真智母娘。大宮の路上で知り合った宮下の手配で、もう一度共同統治地域を目指すことにするが……。

[承前]

 JR川崎駅の駅ビルを、北口東へと出た。

 宮下からの新しい指示は、新築工事中の川崎市役所のある側に行けとのことだった。沖本信也は、真智と由奈と一緒にロータリーの外を回り、京浜急行の高架の線路をくぐって、川崎駅の東側に出た。

 沖本信也にとって、川崎のこのあたりも初めての土地だった。昨日から、東京の周辺でありながら、足を下ろしたことのなかった地区をずいぶん回っている。学生時代は、生活圏がほんとうに狭かったのだ。ろくに東京を知らないうちに、自分は卒業して故郷に帰っていた。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
佐々木譲 [ささき・じょう] 1950(昭和25)年、北海道生れ。1979年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞。1990(平成2)年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞を受賞。2010年、『廃墟に乞う』で直木賞を受賞する。著書に『ベルリン飛行指令』『天下城』『笑う警官』『警官の血』『地層捜査』『沈黙法廷』『抵抗都市』『図書館の子』『降るがいい』『雪に撃つ』『帝国の弔砲』などがある。
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