裂けた明日
裂けた明日 (26)

連載小説:裂けた明日 第26回

執筆者:佐々木譲 2021年10月23日
タグ: 日本
エリア: その他
写真提供:AFP=時事
内戦により、分断された日本。相次ぐ震災と原発事故、そして例の病気の蔓延で、国民の生活は壊滅的な影響を受けていた。家族を亡くし一人暮らす男の元へ、逃亡者が現れる――。<作家の眼が、現実を鋭く照射する。近未来の分断日本を描く、スリリングなSF長篇>

無事に封鎖線を越え、宿泊場所のテント村で入場の手続きを済ませた三人。施設の案内は、少し意外なものだった。

[承前]

 戦前の労働条件が、世界水準からかけ離れていたのだ。いまは国民融和政府の支配地域では、どの企業でも、どこの作業現場でも、待遇はこのようなものなのではないか。

 信也は言った。

「昔がひどすぎた。非正規や派遣の労働者も、ホワイトカラーも。北は、いまもそのままだけど」

「あの係のひとは、作業員がやめていくことも気にしていない様子でした」

カテゴリ: カルチャー
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
佐々木譲 [ささき・じょう] 1950(昭和25)年、北海道生れ。1979年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞。1990(平成2)年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞を受賞。2010年、『廃墟に乞う』で直木賞を受賞する。著書に『ベルリン飛行指令』『天下城』『笑う警官』『警官の血』『地層捜査』『沈黙法廷』『抵抗都市』『図書館の子』『降るがいい』『雪に撃つ』『帝国の弔砲』などがある。
フォーサイトのお申し込み
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top