もはや米国の「最も重要な地域」ではない欧州が目指す「戦略的自律」

執筆者:鶴岡路人 2021年11月25日
エリア: 北米 ヨーロッパ
欧州の「戦略的自律」を積極的に進めたいマクロン仏大統領(中央左)だが……(C)EPA=時事
欧州にとって「戦略的自律」は、米欧が共に行動できない可能性が高まるほど具体性と必要性を増して行く。中国シフトを進める米国の欧州へのコミットメントが低下すれば、従来の構図が規定してきた“対米依存”のコストとベネフィットもまた変化する。

 欧州で「戦略的自律(strategic autonomy)」に関する議論が盛んだ。それが何であるかについて単一の定義は存在しないものの、本質的に意味されるのは、戦略的に重要な問題に関する選択を、自らの利益と価値に基づき、自ら下せる状態のことである。

 その過程や結果において、「誰かから自立・独立すること(independence)」が目的なのではない。自律的に決定できることが重要であり、その選択は、例えば米国と同じになることもあれば、異なることもある。それを自ら決定するというプロセスが重要なのだといえる。

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カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
鶴岡路人(つるおかみちと) 慶應義塾大学総合政策学部准教授、戦略構想センター・副センタ―長 1975年東京生まれ。専門は現代欧州政治、国際安全保障など。慶應義塾大学法学部卒業後、同大学院法学研究科、米ジョージタウン大学を経て、英ロンドン大学キングス・カレッジで博士号取得(PhD in War Studies)。在ベルギー日本大使館専門調査員(NATO担当)、米ジャーマン・マーシャル基金(GMF)研究員、防衛省防衛研究所主任研究官、防衛省防衛政策局国際政策課部員、英王立防衛・安全保障研究所(RUSI)訪問研究員などを歴任。著書に『EU離脱――イギリスとヨーロッパの地殻変動』(ちくま新書、2020年)、『欧州戦争としてのウクライナ侵攻』(新潮選書、2023年)など。
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