医療崩壊 (59)

オミクロン株でも無意味な鎖国:日本感染症医療「120年の思考停止」(下)

執筆者:上昌広 2022年2月2日
軽症者で病床が埋まってしまえば医療崩壊は避けられない ⓒ時事
日本のコロナ対策は、1897年に制定された伝染病予防法の「隔離」思想を色濃く残す。ハンセン病患者差別など社会を歪めてきたその「隔離」とは、政府・官僚を「責任逃れ」に向かわせる仕組みだと言える。コロナ鎖国は人災なのだ。それを「日本型モデルの成功」などと称するのは、120年を経てもまだ続く罪深き思考停止に他ならない。

*『オミクロン株でも無意味な鎖国:日本感染症医療「120年の思考停止」(上)』から続きます。

「検査をしないから医療が崩壊しない」という理屈のウラ

 コロナ対策の法的根拠は感染症法だ。その第19条には、以下のようにある。

「都道府県知事は、一類感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該感染症の患者に対し特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関に入院し、又はその保護者に対し当該患者を入院させるべきことを勧告することができる」

カテゴリ: 医療・サイエンス
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執筆者プロフィール
上昌広(かみまさひろ) 特定非営利活動法人「医療ガバナンス研究所」理事長。 1968年生まれ、兵庫県出身。東京大学医学部医学科を卒業し、同大学大学院医学系研究科修了。東京都立駒込病院血液内科医員、虎の門病院血液科医員、国立がんセンター中央病院薬物療法部医員として造血器悪性腫瘍の臨床研究に従事し、2016年3月まで東京大学医科学研究所特任教授を務める。内科医(専門は血液・腫瘍内科学)。2005年10月より東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究している。医療関係者など約5万人が購読するメールマガジン「MRIC(医療ガバナンス学会)」の編集長も務め、積極的な情報発信を行っている。『復興は現場から動き出す 』(東洋経済新報社)、『日本の医療 崩壊を招いた構造と再生への提言 』(蕗書房 )、『日本の医療格差は9倍 医師不足の真実』(光文社新書)、『医療詐欺 「先端医療」と「新薬」は、まず疑うのが正しい』(講談社+α新書)、『病院は東京から破綻する 医師が「ゼロ」になる日 』(朝日新聞出版)など著書多数。
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