ウクライナ侵攻で起きている「宇宙の武器化」の新たな展開

執筆者:鈴木一人 2022年4月6日
エリア: ヨーロッパ
スターリンクのターミナルは続々とウクライナに到着している(ウクライナのミハイル・フョードロフ副首相公式Twitter、3月16日投稿より)
ウクライナ軍の情報戦・心理戦に、宇宙からのインテリジェンス情報を「武器化」する米国の支援が大きな働きを見せている。またイーロン・マスク氏や米宇宙技術企業Maxarなど民間が、これを後押ししていることも見逃せない。経済安全保障推進法案、国家安全保障戦略を通じて、日本の宇宙システム管理の在り方も問われている。

 ロシアによるウクライナ侵攻は、多くの人が想定していたような、サイバー空間や宇宙空間で繰り広げられる情報戦や心理戦を含む「ハイブリッド戦」ではなく、いかにも古めかしい、戦車や装甲車による都市攻撃と、ミサイルによる無差別爆撃といった戦術が取られた。2014年に迅速にクリミア半島を占拠した時のような、内部に呼応する勢力もなく、また、ウクライナ北部、東部、南部と全域に戦線を広げ、目的のはっきりした軍事行動ではない、ウクライナ全土の同時掌握を目指すかのような大規模な作戦を展開することで、局地的な勝利を目指す「ハイブリッド戦」の方式を取ることはできなかったものと思われる。

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カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
鈴木一人(すずきかずと) すずき・かずと 東京大学公共政策大学院教授 国際文化会館「地経学研究所(IOG)」所長。1970年生まれ。1995年立命館大学修士課程修了、2000年英国サセックス大学院博士課程修了。筑波大学助教授、北海道大学公共政策大学院教授を経て、2020年より現職。2013年12月から2015年7月まで国連安保理イラン制裁専門家パネルメンバーとして勤務。著書にPolicy Logics and Institutions of European Space Collaboration (Ashgate)、『宇宙開発と国際政治』(岩波書店、2012年サントリー学芸賞)、編・共著に『米中の経済安全保障戦略』『バイデンのアメリカ』『ウクライナ戦争と世界のゆくえ』『ウクライナ戦争と米中対立』など多数。
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