サイバーウォー・クレムリン (14)

米「第3オフセット」に対抗するロシア「将来戦構想」

執筆者:小泉悠 2018年4月26日
エリア: 北米 ヨーロッパ
「将来の戦争」について検討を重ねるゲラシモフ参謀総長(前列右)(ロシア国防省ホームページより)

 

 米軍が進める将来戦構想「第3オフセット」については、前回(2018年4月16日「米中が鎬を削るドローン『スウォーム戦略』」)で簡単に触れた。先端技術力を活かして新たな戦闘の様態を生み出し、中露の在来型軍事力を「オフセット(相殺)」しようとする戦略である。

 問題は、こうした戦略の「標的」であるロシアだ。現在のロシアは軍事大国としての存在感を示しているものの、それは特殊部隊や民兵を組み合わせたローテクの「ハイブリッド戦争」や、古典的な核抑止、そして米国のハイテク戦力を妨害する能力によるところが大きい。今後、米軍の「第3オフセット」が本格化していけば、ロシアがこれに完全に追随することは困難であろう。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
小泉悠(こいずみゆう) 東京大学先端科学技術研究センター准教授 1982年千葉県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修了。民間企業勤務を経て、外務省専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究員として2009年~2011年ロシアに滞在。公益財団法人「未来工学研究所」で客員研究員を務めたのち、2019年3月から現職。専門はロシアの軍事・安全保障。主著に『軍事大国ロシア 新たな世界戦略と行動原理』(作品社)、『プーチンの国家戦略 岐路に立つ「強国」ロシア』(東京堂出版)、『「帝国」ロシアの地政学 「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(同)。ロシア専門家としてメディア出演多数。
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