政治的なるものとは~思索のための1冊 (1)

敗北を恐れる者は一流の指導者たり得ない――リチャード・ニクソン『指導者とは』

執筆者:橋本五郎 2022年4月17日
リチャード・ニクソンは政治家であると同時に、優れた政治評論家でもあった
 
政治に求められる「行動」には、「思索」が伴わなければならない。それはいかにして涵養されるべきなのか――半世紀にわたって永田町の現場を見つめてきた政治記者が、政治の本質へと誘う思索のための必読書を紹介する。

 第37代米大統領リチャード・ニクソンは、大統領としては毀誉褒貶相半ば、というよりはウォーターゲート事件で弾劾されそうになり辞任せざるを得なかったという負のイメージの方がはるかに強いだろう。しかし、1982年に上梓された第一級の政治指導者論『指導者とは』(文春学藝ライブラリー)の著書ただ1冊だけで、政治評論家として歴史にその名を刻むに違いない。

 この書は、世界の指導者に対する自らの体験に裏打ちされた鋭い観察眼があるだけではない。深い人間理解と歴史への省察に満ちている。俎上に載っているのはウィンストン・チャーチル、シャルル・ドゴール、ダグラス・マッカーサー、吉田茂、コンラート・アデナウアー、ニキタ・フルシチョフ、周恩来に加えて、中東や第三世界を含む同時代のリーダーが網羅されている。

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カテゴリ: 政治 カルチャー
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執筆者プロフィール
橋本五郎(はしもとごろう) 『読売新聞』特別編集委員。1946年秋田県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、読売新聞社に入社。論説委員、政治部長、編集局次長を歴任。2006年より現職。『読売新聞』紙上で「五郎ワールド」を連載するほか、20年以上にわたって書評委員を務める。日本テレビ『スッキリ』、読売テレビ『ウェークアップ!ぷらす』、『情報ライブミヤネ屋』ではレギュラーコメンテーターとして活躍中。2014年度日本記者クラブ賞を受賞。著書に『範は歴史にあり』(藤原書店)『「二回半」読む――書評の仕事1995-2011』(以上、藤原書店)『不滅の遠藤実』(共編、藤原書店)『総理の器量』『総理の覚悟』(以上、中公新書ラクレ)『一も人、二も人、三も人――心に響く51の言葉』(中央公論新社)『官房長官と幹事長――政権を支えた仕事師たちの才覚』(青春出版社)など多数。
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