「認知戦」の将来(中):ウクライナを巡る「米露」攻防戦

ロシア・ウクライナ戦争では今のところ、ウクライナ・米国の「認知戦」がロシアのそれを封じ込めている(写真左からプーチン、ゼレンスキー、バイデン各大統領)(C)AFP=時事
2014年のクリミア併合では、ロシアは「戦略的ナラティブ」を巧みに使って成功した。だがウクライナ侵略では、米国が「事前反論戦略」という新たな概念を用いて封じ込め、ウクライナも正確な情報発信で国際世論の支持を得た。(上編はこちらから)

 前回見てきたように、中国、ロシア、米国は、「認知戦」と呼ばれる戦い方や、それに相当する概念を近年急速に発達させている。次に、こうした「認知戦」が今般のウクライナ戦争においてどのように実践されたか、その教訓について分析する。

ロシアの「認知戦」を封じた米国の「事前反論戦略」

 ロシアは、現在進行中のウクライナ戦争に関し、国際社会からの強い非難にさらされており、「認知戦」という側面において敗退している。2月24日の侵攻開始に伴い、ロシアは「抑圧されるロシア系住民を救出するための特別軍事作戦」を行うと主張した34。これは、前述の2014年に用いられた「戦略的ナラティブ」と類似しており、国際社会に対する正当性の主張を意図としていたと考えられる。しかし、この「戦略的ナラティブ」は、ロシア国内においては機能しているが35、国際世論にほとんど影響を与えてはいない。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
高木耕一郎(たかぎこういちろう) ハドソン研究所研究員、陸上自衛隊1等陸佐・東北方面情報隊長 1978年生まれ。北海道大学工学部卒、北海道大学大学院工学研究科修了後、2004年陸上自衛隊入隊。バージニア大学公共政策学部修了。防衛省統合幕僚監部防衛班長、東北方面総監部情報課長などを経て現職。最近の著作は、“Is the PLA Overestimating the Potential of Artificial Intelligence?” Joint Force Quarterly 116, no. 1 (2025); “Cognitive Centric Warfare: Modelling Indirect Approach in Future Warfare.” Journal of Information Warfare 23, no. 2 (2024); “Xi Jinping’s Vision for Artificial Intelligence in the PLA”, The Diplomat (November 16, 2022); “Future of China’s Cognitive Warfare: Lessons From the War in Ukraine”, War on the Rocks (July 22, 2022); “New Tech, New Concepts: China’s Plans for AI and Cognitive Warfare”, War on the Rocks (April 13, 2022)など。
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