ブラジル三権襲撃事件を引き起こした政治的分極化と陰謀論

執筆者:舛方周一郎 2023年1月26日
エリア: 中南米
三権広場の大統領府前でデモを行う人々(C)AFP=時事
ブラジルのボルソナーロ前大統領の急進的な支援者が大統領府、連邦議会、最高裁判所を襲撃した。事件はなぜ起き、何をもたらすのか。米国の議会襲撃事件との違いを踏まえながら、SNS上で見られた前兆、背景にある政治的分極化と陰謀論、今後も続くと予想されるボルソナーロとルーラの戦いについて解説する。

 

 ブラジルの首都ブラジリアで2023年1月8日、ジャイール・ボルソナーロ前大統領が敗れた昨年の大統領選に「不正があった」と訴えるデモ参加者ら約4000人の一部が暴徒化し、大統領府、連邦議会、最高裁判所に侵入した。今回の事件は2021年1月に米国でトランプ支持者の一部が起こした連邦議会の襲撃事件を彷彿とさせるものだったこともあり、世界中に波紋を呼んだ。しかし、今回の事件を米国の状況やトランプ氏との共通点のみに基づいて解釈することは誤解を招いてしまう。本稿ではひとまず、事件の背景と経緯、事件の影響と今後を整理する。

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カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
舛方周一郎(ますかたしゅういちろう) 東京外国語大学世界言語社会教育センター講師。1983年生まれ。上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科博士後期課程修了、博士(国際関係論)。サンパウロ大学国際関係研究所客員研究員、神田外語大学専任講師を経て2020年4月より現職。専門は国際関係論・現代ブラジル政治。著書に『つながりと選択の環境政治学―『グローバル・ガバナンス』の時代におけるブラジル気候変動政策』(単著/2022年/晃洋書房)、『「ポスト新自由主義期」ラテンアメリカの政治参加 』(共著/2014年/アジア経済研究所)、『新版 現代ブラジル事典』(分担執筆/2016年/新評論)、『ラテンアメリカ 地球規模課題の実践』(共著/2021年/新評論)、『UP plus新興国から見るアフターコロナの時代―米中対立の間に広がる世界』(共著/2021年/東京大学出版会)“Brazil-Japan Cooperation: From Complementarity to Shared Value,” Authored chapters in Books, Springer, 2022.など。
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