【特別鼎談】中谷昇×山岡裕明×山田敏弘
転換期を迎える日本の「サイバー防衛」「サイバー捜査」に必要なこと(下)

執筆者:中谷昇
執筆者:山岡裕明
執筆者:山田敏弘
2023年3月8日
エリア: アジア
サイバー人材の育成も大きな課題(C)qunica.com/stock.adobe.com
政府が検討を進めているサイバーセキュリティの新司令塔組織と能動的サイバー防衛にはどのような課題があるのか。サイバーセキュリティのスペシャリスト3人が徹底議論する日本の「サイバー防衛」「サイバー捜査」。(前編はこちらからお読みいただけます)

 

能動的サイバー防衛の課題

山田 日本政府は「アクティブ・ディフェンス」、「能動的サイバー防衛」を日本のサイバーセキュリティに組み込もうとしています。ただ、憲法で規定されている「通信の秘密」や不正アクセス禁止法といった法律面での課題がさまざまある。日本に能動的サイバー防衛ができるのでしょうか。

 

山岡 サイバー空間を舞台とする防衛や調査では、法改正を含めた法律上の議論がますます重要になってくると思います。

 私が最近担当したサイバー調査の事案でも、調査の手法が法律に抵触しないかが問題となりました。

 1つがダークウェブインテリジェンスです。ハッカーが盗んだであろう被害企業に関するデータをダークウェブ上で発見したため、当該被害企業から依頼を受けて、データの真偽を確認するためデータをダウンロードしようとしたのですが……

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
中谷昇(なかたにのぼる) Zホールディングス株式会社常務執行役員。1993年に警察庁入庁。警察庁情報技術犯罪対策課課長補佐等を経て、インターポールで経済ハイテク犯罪対策課長、ITシステム局長兼CISOを歴任。2012年INTERPOL Global Complex for Innovation初代総局長に就任、IGCIをサイバー犯罪対策の国際警察協力の拠点に発展させる指揮を執った。2019年3月警察庁退官、同年4月ヤフー株式会社執行役員就任、同年6月一般社団法人日本IT団体連盟常務理事、同年10月Zホールディングス株式会社執行役員、 2020年6月株式会社ラック社外取締役 、同年10月より現職。著作に『超入門 デジタルセキュリティ』(講談社)。
執筆者プロフィール
山岡裕明(やまおかひろあき) 八雲法律事務所 弁護士。University of California, Berkeley, School of Information修了(Master of Information and Cybersecurity⦅修士⦆)。内閣サイバーセキュリティセンター(NISC) タスクフォース構成員(2019~2020年、2021~)、総務省・経産省・警察庁・ NISC「サイバー攻撃被害に係る情報の共有・公表ガイダンス検討会」検討委員( 2022~)。
執筆者プロフィール
山田敏弘(やまだとしひろ) 国際情勢アナリスト、国際ジャーナリスト、日本大学客員研究員。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版、MIT(マサチューセッツ工科大学)フルブライトフェローを経てフリーに。著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『CIAスパイ養成官』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本』(講談社)、『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)。公式YouTube「山田敏弘 SPYチャンネル」 (https://www.youtube.com/channel/UCVITNlkbLneMV-C9FxzMmEA)も更新中
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