「もはや自社株買いは不要」と海外投資ファンドが日本企業に伝える真意

執筆者:磯山友幸 2023年3月27日
タグ: マネー 日本
エリア: アジア
企業の資本調達環境が180度変わる可能性が出てきた  (C)EPA=時事
2022年の上場企業の自社株買いは過去最高の9兆円超。これが日本株を下支えしたことは疑いない。だが、企業にとって借入よりもコスト負担が高いエクイティが圧縮されるべき時代は、低金利の終焉と金融システム不安によって幕が引かれた。資本減らしによるROE上昇ではなく、利益を増やすことでROEを高める経営が待ったなしで求められる。

 米国の中堅銀行が相次いで破綻した。総資産全米16位のシリコンバレー銀行(SVB)と同29位のシグネチャー銀行である。米政府は2行の預金を全額保護する特例措置を発動、「連鎖の危機があるような場合には同様の措置を取ることが正当化され得る」(ジャネット・イエレン米財務長官)とし、米国の銀行システムを守るために必要な措置だったことを明らかにした。

 その直後にはスイス2位の大手金融機関クレディ・スイスが経営危機に直面、同国最大手のUBSが買収して救済する事態に陥った。クレディ・スイスについては数年前から投資銀行部門の縮小による経営再建が課題とされていたが、このタイミングで事実上行き詰まったことで、金融危機が世界的に拡大するのではないかという危惧が金融市場関係者の間に広がった。

 著名投資家のジム・ロジャーズ氏がリーマン・ショックのような金融危機の再来に警鐘を鳴らしたほか、1980年代の銀行の連鎖破綻や、世界大恐慌が始まった1929年の銀行破綻との類似性を指摘する声も上がった。今のところ大規模な連鎖破綻にはつながっていないが、世界が固唾を飲んで金融市場の行方を見守っている。……

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カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
磯山友幸(いそやまともゆき) 1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト活動とともに、千葉商科大学教授も務める。著書に『2022年、「働き方」はこうなる』 (PHPビジネス新書)、『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、『破天荒弁護士クボリ伝』(日経BP社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)、『「理」と「情」の狭間――大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP社)などがある。
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