
5月~6月は企業が株主の存在を最も意識する季節だ。主要な米国企業や日本の大手流通業が5月に、多くの日本と欧州の企業が6月に、株主総会を開催する。ここ数年の株主総会で最も注目される存在は、いわゆる「物言う株主(アクティビスト)」。企業経営に様々なかたちで注文をつけ、総会への株主提案も辞さない投資家だ。日本ではアクティビストが経営トップの実質退任を求めているセブン&アイ・ホールディングスが5月25日に株主総会を開く。結果の如何に関わらず、アクティビストへの関心はおおいに高まる。経営陣にとっては企業価値を向上させる良きパートナーとなりうるが、上手につきあっている企業は少数だろう。
往年のような物言わぬ株主、すなわち持ち合い株主の復活は期待できないにせよ、もう少し長い視点で経営を見てくれる投資家はいないものか……。これが、多くの日本企業の経営者の偽らざる気持ちのはずだ。そうかといって、大規模な資本調達の見返りとして株式を不特定多数の自由な売買に委ねている上場企業は、株主を選ぶことはできない。原則、どんな特性の投資家が株主になろうとも、平等につきあわなければならない。株主平等の原則だ。
さて、どうするか。
上場企業は株主を選べないが、選ぶための戦略を考えることは有効である――。筆者はこう考えている。特に最近は、オムロンで投資家向け広報(IR)を担当する井垣勉氏の考えをうかがう機会を得て、確信を深めた。
「企業は株主を選べないが、選ぶ努力はできる」。コンサルや日本コカ・コーラを経てオムロンに引き抜かれたコミュニケーションのプロは、IRの極意をこう語った。具体的に実行するテーマは以下の通りだ。
オムロンIRの「極意」とは
まず年初に、1年の間にアプローチすべき長期運用の機関投資家を60〜80社選ぶのだという。その上で個別の運用会社の投資余力やオムロン株の保有状況・可能性などを分析し、年600〜700件のワン・オン・ワン(個別)、あるいはスモール・ミーティングを実施する。こうした投資家ミーティングが、最盛時には年900件に達した。
ミーティングの主要なトピックスは……

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