
全上場企業の約4割を占める3月決算会社が相次いで6月に総会を開く。今年2月に日経平均株価が34年ぶりに史上最高値を更新して、初の株主総会シーズンだ。株主提案が数の上で引き続き高水準であるほか、その内容も取締役の交代や資本政策の変更など多岐に亘るようになった。議決権行使の基準を厳格化している伝統的な資産運用会社が、アクティビスト(物言う株主)に賛同するケースも増えると見られる。株主と対話する企業の力が試されようとしている。
株式「持ち合い」比率はついに11%まで低下
企業と市場の関係を考えるうえで外せない視点は、日本的経営を支えていた株式の「持ち合い」や、投資収益を第一義に考えない「政策投資」の減少だ。野村資本市場研究所の推計によると、これら「広義の持ち合い」の比率はバブル崩壊直後の1991年度には5割を超えていたが、2023年度は約11%に低下。足元でも損害保険会社の政策保有株放出や、トヨタ自動車など大企業グループ内の持ち合い解消などの動きが続いている。こうした流動化された株式の多くは、個人や国内外の機関投資家などの手に渡っており、株価や業績によって経営の支持・不支持は機動的に変わる。
加えて、昨年来、東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営」を上場企業に求め始めたことから、株価純資産倍率(PBR)が1倍を下回るような企業を中心に、自社株買いなどの施策が相次ぎ打ち出されるようになった。そこへ、国内外のアクティビストがいっそうの株主還元や経営効率、成長戦略を求めるようになり、今年3月には日経平均が初めて4万円の大台を突破するまでになった。
その後の日経平均は一進一退をくり返している。今年の株主総会は市場最高値圏にある日本の株価が、今後も持続的に上昇していけるのか、あるいは息切れして長い停滞のトンネルに入ってしまうのかの分岐点になる。例年にも増して総会の提案や決議が注目されるゆえんだ。
三菱UFJ信託銀行の集計によると、6月13日時点で91社が336議案の提案を受けている(グラフ1)。

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