地球の運命? 恒星が惑星を飲み込む様子を観測

2023年5月27日
タグ: 宇宙
エリア: その他
地球から約1万5000光年の距離にある恒星の表面をかすめ、完全に飲み込まれる前に破滅する惑星[想像図](C)Reuters
地球から鷲座の方向へ約1万2000光年進んだところに位置する巨大ガス惑星が、寿命の最終段階にある恒星に飲み込まれる瞬間が観察された。それは約50億年後に太陽が同様の段階に入った時に、地球や水星、金星を待ち受ける運命を彷彿とさせる。

[ワシントン発(ロイター)]地球の悲惨な運命が垣間見えるかのような現象が観測された。年老いて膨張した恒星が木星のような惑星を飲み込んだ後、げっぷをするかのように宇宙空間へ勢いよく物質を吐き出す様子が初めて記録された。研究成果は5月3日、学術誌「Nature」に掲載された。

 この恒星は寿命の最終段階である「赤色巨星期」の初期段階にあり、中心部の水素燃料を使い果たし、膨張しはじめている状態だった。恒星が大きくなるにつれ、その表面が惑星の軌道に達したことで今回の現象が起こった。恒星は太陽系と同じ天の川銀河にあり、地球から鷲座の方向へ約1万2000光年進んだ場所に位置している。光年は1年間に光が進む距離を示し、約1万2000光年は約9.5兆kmにあたる。この恒星が若かった頃は、太陽と同じくらいの大きさで、組成も似ていたが、誕生から約100億年が経った現在は、太陽の倍ほどの大きさがある。

 赤色巨星は元の直径の100倍にまで膨張し、行く手を塞ぐ惑星をすべて飲み込む。恒星が膨張する様子はこれまでも観測されていたが、惑星が飲み込まれる様子を観測したのは初めてだ。

 筆頭著者であるマサチューセッツ工科大学(MIT)カブリ天文物理学研究所の博士研究員、Kishalay De氏によると、太陽系の内側にある水星、金星、地球の3つの惑星は、約50億年後に太陽が赤色巨星へ変貌すると、同じように太陽に飲み込まれる運命を辿ることになる。

 この研究で着目された惑星は「ホットジュピター」と呼ばれるタイプのもので、木星と同様に巨大ガス惑星だが、恒星に対して非常に近い軌道を持つ。この惑星は木星よりも数倍ほど大きく、1日足らずの周期で恒星の周りを公転していた。水星が太陽の周りを公転する軌道よりも、恒星に近い軌道を取っていた。そして恒星が膨張するにつれ、より公星に近い軌道になっていった。

 論文の共著者であるハーバード・スミソニアン天体物理学センターの博士研究員Morgan MacLeod氏は、「惑星は、まるで地球の大気圏に落ちていく人工衛星のように、恒星の大気圏を通り抜けていきました。惑星が恒星の大気圏の奥深くに落ちるにつれて、惑星の周りの密度が高くなり、さらに速く内側へ引きずり込まれていきました」と述べ、その後、明るい爆発を伴って惑星の物質が宇宙空間へ放出されたことに関しては、こう言う。「数百万年間、数十億年間も安定して存在していた惑星の軌道が急に恒星に突入することで生み出されました。例えるならば、恒星は惑星をあまりに速く飲み込んだあまり、勢い良くげっぷをしたのです。高温によって惑星が次第に引き裂かれ、引き裂かれた物質が恒星の中で混ざり合ったのです」……

カテゴリ: 医療・サイエンス
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