日経平均「疑心暗鬼のバブル後最高値」はどう終わるか、あるいは更なる上昇か

執筆者:磯山友幸 2023年6月8日
タグ: マネー 日本
エリア: アジア
海外投資家の買い越しは累計4兆円に達している[2023年6月7日午前、続伸した日経平均株価を示すモニター](C)時事
33年ぶりの高値に押し上げた原動力は海外投資家の「日本株ブーム」。低金利の円を調達して日本株に投資するバフェット氏にこぞって相乗りしている格好だが、それは超円安を前提にした一種のバブルと言えるだろう。問題はこの「好景気」感に乏しい上げ相場の終わり方と、上昇が更に続く場合の円安加速を喜ぶべきかだ。

 

 日経平均株価が戻り高値を更新し続けている。6月4日に3万1000円台に乗せてバブル後の高値を付け、7日は利益確定売りに押されて大幅反落となったが、一時は3万2700円台と4営業日連続の高値更新を記録した。33年前の1990年7月の水準だが、これは1989年12月29日取引時間中に3万8957円44銭、大引で3万8915円87銭の史上最高値を付けたのち、バブル崩壊で大幅に株価が下落していく途中の数字である。逆に株価が最高値に向かって駆け上がっていたのは34年前のことだ。

 いま、「バブルだ」という声も聞かれる。だが、34年前、1989年の上げ相場の時のような「好景気」感はまったくない。当時は、金持ちのみならず普通のサラリーマンまでが好景気を謳歌していた。深夜に六本木の交差点でタクシーをつかまえるため1万円札を振っている光景が当たり前のように繰り返されていた時代だ。いまは、そんな実体経済の過熱感はない。なぜ、急速に株価が上昇しているのか。

 最大の要因は海外投資家の買い。日本取引所グループが発表している投資部門別売買状況(東証と名証の合計)によると、海外投資家が5月26日まで9週間連続で買い越したのだ。その累計額は4兆円に達しており、ちょっとした日本株ブームが起きている。ではなぜ、海外投資家は日本株を買っているのか。

原動力はバフェット流の「円キャリートレード」

「海外投資家の日本株への関心がものすごいことになっています」と語るのは外資系証券会社のエコノミスト。日本株の話が聞きたいと言う海外機関投資家やファンドなどの要望で、欧州や米国、アジアへの出張に大忙しだという。「彼らが日本株を買う理由はインフレですよ。デフレに沈んでいた日本でいよいよインフレが本格化する。そうなれば株価は大幅に上昇すると読んでいるのです」。……

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カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
磯山友幸(いそやまともゆき) 1962年生れ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、大阪証券部、東京証券部、「日経ビジネス」などで記者。その後、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、東京証券部次長、「日経ビジネス」副編集長、編集委員などを務める。現在はフリーの経済ジャーナリスト活動とともに、千葉商科大学教授も務める。著書に『2022年、「働き方」はこうなる』 (PHPビジネス新書)、『国際会計基準戦争 完結編』、『ブランド王国スイスの秘密』(以上、日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)、『破天荒弁護士クボリ伝』(日経BP社)、編著書に『ビジネス弁護士大全』(日経BP社)、『「理」と「情」の狭間――大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP社)などがある。
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