【Foresightインタビュー】マネックスグループ代表執行役社長CEO・松本大氏

脱デフレ時代に日本の企業と社会を強くする「一番簡単で効果的な方法」

執筆者:松本大
執筆者:浪川攻
2023年3月16日
タグ: 日本 マネー
エリア: その他
写真提供=マネックスグループ
長いデフレにようやく出口が見えてきた。経済の新局面の牽引役には、いまや2000兆円規模に膨らんだ個人の金融資産が欠かせない。岸田政権もNISA(少額投資非課税制度)拡充など個人マネーが投資に向かう仕組み作りに力を入れるが、その成否は私たちの資産形成に深い関係を持つはずだ。1999年にネット証券のパイオニアとなるマネックス証券を創業し個人向け金融ビジネスを開拓してきた松本大氏に、金融市場の取材を40年近くにわたって続けるジャーナリストの浪川攻氏がインタビューした。

浪川攻 この国の経済で長年続いたデフレが転換する兆しを見せています。資産バブルが起きた時期を別にすれば、インフレ傾向が見えるのは四十数年ぶりになるわけですが、こうした環境の中で、投資や資産形成にかかわるビジネスはどう変わっていくのでしょうか。

松本大 確かに日本にとっては、2度の石油ショック期以来の体験です。まず考えられるのは、金利負担で設備投資が大変になるということです。だから企業が成長するために、ローン、株式や債券の発行といったファイナンスがしっかり機能することが不可欠になる。それがあってこそ、企業はインフレ期でも設備投資をして国際競争力を持ち、強くなっていけるわけです。

 企業を強くすることは、日本の社会を強くするということでもあります。そこに個人のお金、この国にあるお金が使われる構図が重要ですね。特にこの十数年間は、ディスインフレもしくはデフレであったのと同時に、タンス預金のような動かないお金が大量に発生した。結局、経済が回っていないんですね。

「金融リテラシーが低い」と、どの口が言う?

松本 日本のGDP(国内総生産)は世界3位に落ちましたが、国内金融資産は2位です。GDPの順位がこれから落ちていくのは避けがたいでしょうけれども、金融資産の大きさはおそらくそれほど変わらない。50年後に世界のトップ3やトップ5に入っていることも、やりようによっては可能だと見ています。

 日本は、それこそ中世からある種、特別の生産性をもった国で、富を貯め続けてきた。金を産出したというようなラッキーもあったけれども、なんといっても戦争に負けたのに借金を返した国ですから。この富を上手に動かすことで、かつては企業や日本という国自身が伸びてきたわけです。

 ところが、先ほど浪川さんが仰った70年代のインフレが終わったあと資産バブルというおかしなインフレが起き、それが崩壊してお金が動かなくなってしまった。これを再起動する好機ですし、再起動できなかったら日本は本当に駄目になる。一方で、これができたらGDPの低下もかなりスローダウンして、生活の質は高いレベルを維持できます。

 そして、ここにお金を供与した人が、当たり前のようにお金を増やして……

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
松本大(まつもとおおき) マネックスグループ代表執行役社長CEO 1994年、史上最年少の30歳でゴールドマンサックス・パートナーに就任。アジアにおけるトレーディング、リスク・マネジメントの責任者となり、スペシャル・シチュエーション・グループも設立。1999年、ソニーとの共同出資でマネックスを設立。マネックスは現在、東証プライムに上場している。マネックスグループは、日・米・中(香港含む)・豪でオンライン証券を運営する大手オンライン金融グループ。著書に『今日から始める! 米国株投資超入門 松本大がやっぱり勧めるこれだけの理由』『世界のマーケットで戦ってきた僕が米国株を勧めるこれだけの理由』『「お金の流れ」はこう変わった!  松本大のお金の新法則』など。
執筆者プロフィール
浪川攻(なみかわおさむ) 1955年東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌などで編集・記者として活躍し、2016年4月フリーに。著書に『証券会社がなくなる日 IFAが「株式投資」を変える』『ザ・ネクストバンカー 次世代の銀行員のかたち』(以上、講談社現代新書)、『地銀衰退の真実 未来に選ばれし金融機関』(PHPビジネス新書)、などがある。
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