それでも次期日銀総裁は「下馬評に名前がない」と囁かれる本当の理由

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執筆者:浪川攻 2023年2月6日
タグ: マネー 日本
エリア: アジア
新総裁の最有力候補は雨宮氏とされているが……[衆院予算委員会に臨む黒田東彦総裁(中央右)と雨宮正佳副総裁(同左)=1月30日午後、国会内](C)時事
次期日銀総裁の人事案は2月10日にも国会提示が行われる見通しだ。雨宮正佳氏で最終調整と報じられたが、依然として下馬評に名前のない人物が就任するサプライズの可能性も囁かれる。なぜ、市場関係者はサプライズに注目するのか。その背景には、市場との対話が不可能な状況に陥っている日銀の袋小路が浮かび上がる。

   岸田文雄首相は次の日銀総裁について「2月中にも具体的な名前を国会に伝える」旨を発言した。いまのところ、有力視されているXデイは2月10日である。

   日銀の正副総裁、そして審議委員の人事は、政府が候補者を国会に提示し承認を得て正式決定する。首相発言は、その手続きの開始を意味しており、残す日程はわずかしかない。新総裁をめぐるメディアの取材合戦の主軸は、従来の金融緩和政策を担ってきた要職者か、それとも物価上昇傾向で政策の転換点が近づきつつある中、従来の金融政策から一定の距離を置いてきた者になるかにあるようだ。

   前者では、現在の日銀副総裁である雨宮正佳氏や中曽宏前副総裁の名前が、また後者では、やはり元日銀副総裁の山口広秀氏などが取りざたされる。中曽氏は黒田東彦総裁の第1期(2013年3月〜18年4月)の副総裁であり、山口氏は前総裁の白川方明氏(総裁任期2008年4月〜2013年3月)の下で副総裁を務めた。つまり、主要メディアなどの下馬評に上がっているのは日銀出身者ばかりである。当初の候補者リストが絞り込まれた結果だろう。

   果たして次期日銀総裁はこの中から誕生するのか。最後は白羽の矢が立った者の肚の括り方次第でもあるが、実は市場関係者の間で、「下馬評に名前がない人物」との見方も根強くある。

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カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
浪川攻(なみかわおさむ) 1955年東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌などで編集・記者として活躍し、2016年4月フリーに。著書に『証券会社がなくなる日 IFAが「株式投資」を変える』『ザ・ネクストバンカー 次世代の銀行員のかたち』(以上、講談社現代新書)、『地銀衰退の真実 未来に選ばれし金融機関』(PHPビジネス新書)、などがある。
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