ジャパン・プレミアム再び? メガバンクが恐れる「日本の信用力の静かな破綻」

IN-DEPTH【ニュースの深層】

執筆者:浪川攻 2022年12月19日
タグ: マネー 日本
エリア: アジア
格付会社の判断の行方に金融界は神経を尖らせる[2011年8月24日、日本国債を格下げしたことについて記者会見するムーディーズのトーマス・バーン氏](C)時事
繰り返し語られてきた「日本国債の暴落」は、日銀の大量保有で回避していくことが可能かもしれない。しかし、国債の格下げリスクは裏口から金融界を直撃する。

   メガバンクを筆頭として、わが国の金融業界はこれまで幾度となくドル資金調達に苦しんできた。国際化路線を進むなら、それは必然的に直面する壁である。対外投資、あるいは自身の業務の海外展開には、基軸通貨であるドルの確保が不可欠だからだ。

 調達の首尾を左右するのは、まず第一に企業や業界の信用力だ。たとえば銀行業界の場合、1990年代後半の金融危機の際には、ドル資金の調達コストが跳ね上がる「ジャパン・プレミアム」に直面した。その後も、邦銀の主要なドル調達手段である円・ドルスワップ取引で、調達レートが通常レベルよりも上乗せとなるプレミアムが生じたケースがある。

 海外部門の収益依存度が年々高まるメガバンクなどでは、ドル調達コストが跳ね上がれば海外部門の収益悪化に直結する。これは自国通貨「円」が金融取引などのベースマネーではないことから生ずる構造的な課題だ。

   そして、ここへきてまたドル調達に火種が燻っている。深層部分にあるのは日本国債の格付け問題である。

「経常黒字」と「コロナ対策」という徳俵

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
浪川攻(なみかわおさむ) 1955年東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌などで編集・記者として活躍し、2016年4月フリーに。著書に『証券会社がなくなる日 IFAが「株式投資」を変える』『ザ・ネクストバンカー 次世代の銀行員のかたち』(以上、講談社現代新書)、『地銀衰退の真実 未来に選ばれし金融機関』(PHPビジネス新書)、などがある。
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